あしょろ自然誌

広報あしょろに掲載された足寄の自然に関する話題を紹介しています.

12湯の滝

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湯の滝
雌阿寒岳の麓のオンネトー国設野営場から、歩道を1.5キロメートル進んだ場所に高低差20メートルほどの滝があります。滝上で湧き出る温泉が流れ落ちることから「湯の滝」と言われています。 流れの合間の黒い岩は酸化マンガンが堆積したもので、1950年代には鉱山として採取されていました。1980年代以降の調査により、マンガン酸化細菌の作用で二酸化マンガンが継続的に生成していることがわかり、2000年に「世界唯一の地表で酸化マンガン鉱床が生成中の地」として国の天然記念物に指定されました。希少性が認識される以前は、温泉利用を目的とした整備や、滝壺での観賞用熱帯魚の飼育等の観光開発が行われましたが、マンガンの生成現象や周辺の生態系への悪影響が心配されるため、入浴は禁止され、2013年からは環境省と住民の協力による熱帯魚の駆除が継続されています。湯の滝は、貴重な環境の保全と、教育研究の場としての利活用が望まれます。(山内康平・智和正明)

11カラマツハラアカハバチ

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カラマツハラアカハバチの幼虫
8月下旬から9月にかけて,まだ他のカラマツが青々としている時期に,葉が枯れ落ちてしまったように見えるカラマツを目にすることがあります.これはカラマツハラアカハバチ(以下、ハバチの幼虫が集団でカラマツの葉を食べてしまったことが原因です.ハバチは蜂の仲間ですが、人を刺すような針はなく、人を攻撃することもありません。ハバチはもともと北海道にはいませんでしたが,道内にカラマツが植えられるようになってから移入してきたと考えられています.北海道では1930年頃に新冠町で初めてカラマツへの被害が記録され、1970年台後半に道内各地に大規模な被害が発生しました。2007年頃から十勝のカラマツ林でも見られるようになり、2012年には初めて北海道演習林でも被害を確認しました。 大規模な被害では、林分全体が茶色く枯れたようになりますが、立木が枯れることは極めて稀です。被害を受けると幹の生長量が低下しますが、食害による材質の低下はほぼないと考えられています。 (壁村勇二・内海泰弘)

10タモギタケ

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ハルニレの倒木に発生したタモギタケ
日本では北海道と東北地方に自生するヒラタケ属のキノコで、北海道においては古くから食用として親しまれてきました。味噌汁などの具材として美味であるだけでなく、鮮黄色の見た目は食卓を華やかにしてくれます。アイヌ語でチキサニカルシ(ハルニレに生えるキノコ)と呼ばれるように、初夏から秋の間ハルニレを主とする広葉樹の切株や倒木に発生し、その発生期間の短さから「幻のキノコ」と呼ばれてきました。 北海道では1970年代に施設栽培が開始されて以降、品種や培地の研究が盛んに行われています。2005年には道立林産試験場で開発された「エルムマッシュ291」がタモギタケとしては日本で初めて品種登録され、スーパーなどで目にする機会も増えてきました。 タモギタケには、癌予防や糖尿病、高血圧抑制に対する有効成分が含まれているとされ、健康補助食品としても普及しています。かつて幻のキノコと呼ばれたタモギタケは、栽培技術の進歩により身近な存在になってきています。(村田秀介・智和正明)

08エゾアカガエル

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演習林内で撮影されたエゾアカガエル

北海道にもともと生息するカエルは2種おり、その内の1種がエゾアカガエルです。繁殖期は平野部で4〜5月とされていますが、3月下旬でも林内の湿地などで「キャララララ」と鳥のような澄んだ鳴き声を聞くことがあります。エゾアカガエルのオタマジャクシは、外敵がいる危険な環境下ではたらく誘導防御という戦略を示すことが知られています。例えば、エゾサンショウウオの幼生がいると、エゾアカガエルのオタマジャクシは頭胴部を巨大化させることでエゾサンショウウオの幼生に食べられることを防ぎます。一方でエゾサンショウウオが生息しない離島では外敵がいないため,そのようなオタマジャクシの頭胴部の巨大化は起こりません。現在、エゾアカガエルは国際自然保護連合のレッドリストでは、近い将来絶滅に瀕する見込みの低い低危険種に分類されています。しかし最近では、外来種のアメリカミンクによる越冬中のエゾアカガエルの捕食が報告されており、これまでとは違った捕食圧にさらされています。 (南木大祐,智和正明)

07キタキツネ

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冬毛のキタキツネと生後1か月ほどの子ギツネ(円内)

日本にすむキツネは、ユーラシアと北アメリカに広く分布するアカギツネの亜種で、本州から九州に生息するホンドギツネと北海道に生息するキタキツネがいます。キタキツネは夜行性の動物ですが、昼夜を問わず出没し、山林よりも畑や放牧地、市街地で良く見かけます。食肉目イヌ科の動物で、ネズミやウサギ、鳥類、昆虫などを捕まえて食べ、秋には果実や木の実も食べます。中には路上で観光客にえさをねだるものやゴミや残飯をえさにしているものもいます。キタキツネは年に1回、春に平均4頭の子どもを出産します。子どもは生まれて1か月ほどたつと巣の周囲で遊ぶようになり、約10か月で親と同じ大きさに成長します。秋から冬にかけて親はきびしく追いたてて子別れをします。夏毛のキタキツネは非常に貧弱に見えますが、秋も終わりに近づく頃には、すでに冬毛になり、体にも皮下脂肪を蓄えて、厳しい冬をのりきる準備が整います。 (久保田勝義,内海泰弘)

06雌阿寒岳

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演習林から眺めた雌阿寒岳

里見が丘から東を望むと,雌阿寒岳(標高1499m)がゆったりとした裾野を広げているのが見えます。随筆家及び登山家である深田久弥の日本百名山の1座にも数えられ,アカエゾマツ林からハイマツ群落を通り荒涼とした火山荒原をめぐる登山コースは景色が素晴らしいです。健脚の方ならオンネトーに降りるのも面白いでしょう。北海道は本州よりも緯度が高く寒冷なため,本州では高い山にしか見られない植生が比較的標高の低いところで手軽に観察できます。たとえば,アカエゾマツ林に類似した針葉樹林は信州では標高2000m程度まで登らないと見ることはできません。過去の火山噴火も森林の組成や配置に大きな影響を与えています。雌阿寒岳西麓ではハイマツ群落の下限が標高約1000mと低く,その下方に発達したアカエゾマツ林が広がっています。これは400年ほど前に起きた噴火に伴う火砕物の流下によりそれまであった森が破壊されたためと考えられています。山も森も時間とともに少しずつ変わっていくものなのですね。 (中村琢磨,智和正明)

05ベニテングタケ

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テングタケ科テングタケ属のきのこで北半球の温帯以北に広く分布します。足寄では8月下旬から9月下旬頃、主にシラカンバなどのカバノキ属の林に発生し、これらと菌根と呼ばれる共生関係を結びます。鮮赤色の傘の表面に散在する白いつぼの破片が特徴で、これぞ毒きのこといった姿をしていますが、意外にも死亡例は少なく、旨味成分を含むため食用としている地域もあります。 北海道ではきのこによる食中毒が毎年のように発生し、平成元年以降ではテングタケ属のきのこによる被害件数が最も多くなっています。ベニテングタケはイボテン酸やムッシモールなどの有毒成分を含みます。これらの成分は乾燥や熱処理を行っても残存率が高いため、精神錯乱や下痢、嘔吐等の症状を引き起こすことがあるので誤食しないよう注意しましょう。 これからの季節、きのこ狩りに出かける人が多くなりますが、食用であることをきちんと確認して、秋の味覚を楽しんでください。 (村田秀介、内海泰弘)

04ニホンザリガニ

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日本に生息する3種のザリガニ(ニホン・ウチダ・アメリカ)のうちニホンザリガニは唯一の在来種で,日本固有種です。体長は5〜6センチメートルと小さく,他の2種の半分ほどしかありません。北海道と東北北部にのみ生息し,広葉樹に囲まれた源流域の冷たく清澄な水環境を好んで生活しています。人の体温でも火傷してしまうことがあるため,触れる場合は川の水で手をよく冷やす必要があります。 のんびりとした性格で移動能力も低いことから,環境の変化は彼らにとって命取りとなってしまいます。かつては北海道の各地で見られましたが,道路工事や農薬散布といった人間活動に伴う環境の変化に対応できず,その数と生息地を大幅に減らし,2000年には環境省から絶滅危惧粁爐忙慊蠅気譴討い泙后 足寄町の水道水として利用されている演習林内の水源地では,今でもニホンザリガニの姿が見られます。彼らは足寄町の自然が豊かであること,私たちが毎日利用している水がきれいであることを証明してくれているのです。 (村田秀介、智和正明)

03タラの芽

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タラノキは高さ2〜5mになるウコギ科の落葉低木で、若芽を「タラの芽」・「タランボ」と呼び食用にします。北海道から沖縄までの全国と朝鮮半島・中国東北部・サハリン・東シベリアに分布します。二次林や林縁に多く生育し、町内の山林では若い造林地で普通に見ることができますが、全国的には野生のタラノキは非常に少なくなっています。普通は幹や葉にとげが多くありますが、とげの少ないメダラという品種もあります。 タラの芽は山菜の中で特に人気があり、天ぷらにするのが一般的ですが、おひたしや和え物などでも賞味されています。しかし、芽が摘まれすぎると株が枯死してしまいます。採取は先端の一番芽だけにして、二番・三番芽の採取を控えれば、夏には1m近くになる大きな葉を広げて成長できます。最近ではビニールハウスで栽培された綺麗な緑色のタラの芽がスーパーでよく売られています。口いっぱいに広がる独特な香りで春の盛りを感じてはいかがでしょうか?(久保田勝義、内海泰弘)

02カンバ属の花

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シラカンバの雄花

シラカンバをはじめとするカバノキ属は足寄だけでなく北半球の冷温帯に広く生育しています。シラカンバの白い幹と涼しげな佇まいはいかにも北国の情緒を感じさせます。カンバ属は分類学的にはカバノキ科と呼ばれるグループに属し,他にハンノキ属やハシバミ属などがあります。用材・薪炭材,風景を引き立てるアクセントとしての価値がある一方,カバノキ科花粉症の原因としても知られています。カバノキ科花粉症はロシアやヨーロッパなど北国で多く見られる疾患ですが,同時にバラ科植物由来の食べ物に対してじんましん等のアレルギー反応を併発することがあります。バラ科植物は,果物のほかリンゴ酢やアーモンドパウダーなど多くの食品に調味料として利用されていますのでなかなか厄介です。足寄では3月中旬頃からシラカンバの花(雄花序)が開花し,風で枝が揺らされる度に黄色い靄のように花粉が飛散します。この時期はシラカンバの傍に不用意に近づかない方がいいかもしれませんね。(中村琢磨,智和正明)

01タンチョウ

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デントコーンの刈り跡で餌を探すタンチョウ

体長140cm程、翼を広げた大きさは2mを超える国内最大級の鳥で、「北海道の鳥」に指定されています。頭頂部には赤い皮膚が露出し、これが名前(丹頂)の由来になりました。主に北海道東部で繁殖する個体群と、中国北部およびロシア東部で渡りを行う個体群があります。乱獲や開発によりその数を減らし、一時は絶滅したと考えられていましたが、1924年に釧路湿原で再発見された後、保護活動により個体数はある程度回復しました。足寄町内でも利別川や足寄川沿いの湿地や農耕地でしばしば見られるようになり、仙美里ダム等の湿地帯では雛を連れて歩く姿も確認されています。従来は繁殖期を中心に湿原に依存する種でしたが、雑食性で多様な動植物を餌にできることから、近年は農耕地で繁殖し、デントコーンなどを餌とするなど、新たな環境への適応している個体群もあります。このように人との距離が近くなったことにで交通事故などによる人との軋轢が危惧されており,タンチョウと共存するための適切な距離感を探っていく必要があるでしょう。 (南木大祐,内海泰弘)

Last-modified: 2017-11-20 (月) 17:27:30 (14h)
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