あしょろ自然誌

広報あしょろに掲載された足寄の自然に関する話題を紹介しています.

21 植物のフェノロジー

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サワシバの若葉
5月に入り,気温の高い日が増えてきました.北海道のように長く寒い冬がある地域では,春になって生き物が動き始め,日に日に木々の緑が鮮やかになる様子が印象深いです.このように季節に応じて動植物の状態が周期的に変化することをフェノロジー(生物季節)といいます.おなじみのサクラの開花日もその一つですが,他にもアジサイやタンポポの開花,カエデやイチョウの紅葉など,気象庁では1953年より様々な植物のフェノロジーが観測されています.これらは季節の進み方を過去と比べるための指標となり,最近では温暖化の影響の評価にもよく使われています.春の訪れにともなう植物の反応は様々で,フクジュソウのように3月末には花を咲かせるものもあれば,ヤチダモのように6月上旬になってようやく葉を広げるものもあります.毎年の四季折々の楽しみに,身近にある色々な草木の変化をカレンダーに書きとめてみてはいかがでしょうか.(中村琢磨・田代直明)

20 エナガ

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頭部が白いシマエナガ(左下は尾の様子)
冬場の森ではカラ類やコゲラなど違う種類の鳥による群れ(混群)によく出会います。混群を作ることでそれぞれの種類では探せない採餌場所や捕食者を発見しやすくなると考えられています。足寄(または十勝)で見かける混群の中でしばしば先導的な役割をするのがエナガです。体はとても小さく,細い枝先にぶら下がり,太く短い嘴で枝の表面の小動物をついばみます。スズメ目エナガ科の鳥で,北海道で見られる亜種シマエナガは本州以南のエナガより頭部が白くなります。長い尾を柄の長い柄杓(ひしゃく)に例えエナガの名がついたと言われています。冬は寒さに耐えるため羽毛の間に空気を含み丸っこく愛らしい姿になり,「森の妖精」と呼ばれています.写真集が出版されたり,帯廣神社ではシマエナガみくじが発売されるなど大人気です。利別川沿いや公園の木々の中でも見かけます。小鳥の群れを見かけた際に,群を先導するエナガを探してみてください。(山内康平・内海泰弘)

19 利別川

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足寄町市街地と利別川
利別川は陸別町の東三国山北麓が源流となっており、足寄町・本別町・池田町を流れる十勝川水系十勝川支流の一級河川で全長約149kmあります。足寄町旭町で足寄川と合流し、さらに豊頃町で本流の十勝川へ合流し太平洋へ流れています。利別川周辺は川に沿って発達する階段状の地形である河岸段丘になっています。利別川は発電用水としても利用されており、下流域ではかんがい用水等としても利用されています。利別川はアイヌ語の「トウシペッまたはトシ・ペツ」(綱または縄の川あるいは蛇のように蛇行する川等)に由来しています。この名がついた理由には諸説あり、かつてこの川筋が釧路と十勝の境界となっていて、その境界争いに際し、十勝アイヌが河口に縄を張って釧路アイヌを通さなかったという説(綱または縄の川)や、蛇が多くいる、あるいは蛇のように蛇行した川という説(蛇の川)や、沼の多くある川という説があるようです。(壁村勇二・智和正明)

18 雪虫(トドノネオオワタムシ)

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トドノネオオワタムシ
晩秋から初冬、雪のように舞う白い綿きれのような虫を見ることがあります。これが「雪虫」です。その正体はアブラムシ。 アブラムシは季節に応じて、翅(はね)を持たずに繁殖に専念するもの(無翅虫)、翅を持ち植物から植物へ移動するもの(有翅虫)など、様々な形態を持った世代が生まれる複雑なライフサイクルを持っています。この中で、その有翅虫が白い綿状の物質を纏っている種類が、俗に雪虫と呼ばれます。 雪虫の筆頭、トドノネオオワタムシは、晩秋〜初夏はヤチダモ、初夏〜晩秋はトドマツの根際で生活しています。晩秋にトドマツからヤチダモへ移動する有翅虫の姿が、私たちが目にする雪虫というわけです。このように季節に合わせて異なる植物間を移動することを奇主転換といい、アブラムシの仲間においては珍しいことではありません。 雪虫が出現すると初雪が近いといわれており、出現から平均2.24週間後に降雪が観測されるという調査結果もあります。厳しい冬の到来も気がかりですが、不思議な生態をもつアブラムシに思いを馳せるのも面白いですね。(九州大学北海道演習林 田代直明・佐々木寛和)

17 イワオモダカ

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イワオモダカ
樹木の樹皮や岩に張り付いて生活する植物を着生植物といい,コケ植物やシダ植物,ランの仲間などに多く見られます.暖かい地域に分布する種が多いのですが,北海道にも十数種ほど着生植物が分布しています.たとえば足寄町のミズナラ林にはイワオモダカという着生のシダ植物が生育しています.イワオモダカは長さ10cmほどの左右に角が出たスプーンのような葉を持ち,ミズナラの老木の樹幹に群生していることがあります.着生植物は湿気の多寡や日当りの強弱など微妙な環境の違いによって様々に棲み分けており,イワオモダカは足寄町では特に北斜面に生える大木の枝の付け根などを好むようです.足寄町の天然林では探せば点々とイワオモダカを見かけることができますが,全国的には個体数の減少が危惧されたり,絶滅してしまった地域もあります.さまざまな着生植物の住処になっている天然林に入る機会がありましたら,少し目線を上げて,着生植物たちを探してみてください.(中村琢磨・内海泰弘)

16 オニノヤガラ

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オニノヤガラ
森林内に生えるラン科の植物です。葉は鱗片状で茎にまばらにつきます。高さは1m程で7〜8月には茎の先に黄色い花が集まって咲きます。その立ち姿を鬼が使う矢に例え「鬼の矢柄」の名がつきました。また、先がすぼまった花の形からヌスビトノアシという別名もあります。地下にはジャガイモに例えられるような肥大した根茎があり、テンマ「天麻」という眩暈や痒みを抑える生薬としても知られています。 葉緑体を持たず、光合成を行いません。生活に必要な栄養は根で共生している菌類から得ています。このような植物は「菌従属栄養植物」と呼ばれ、他にはギンリョウソウや同じラン科のサカネラン、近年発見されたホンゴウソウ科のヤクシマソウなどがあります。さらにオニノヤガラは共生する菌類が成長過程で変わる珍しい事例として知られています。発芽時はクヌギタケ属などの菌と共生しますが,成熟に至る過程でナラタケ属の菌と共生します。不思議な生態と見た目を持つ植物です。(山内康平・智和正明)

15 マダニ

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シュルツェマダニ
マダニの仲間はクモ綱ダニ目マダニ科に属し、北海道にはヤマトマダニ、シュルツェマダニ、フタトゲチマダニ、ツリガネチマダニ、キチマダニ等が生息しています。足寄の野山で最も多くみられるのが、ヤマトマダニとシュルツェマダニで両種とも春の雪解け直後から出現し、秋頃まで見られますが、ヒトの刺症例は5〜7月に多くなっています。草原や林内などに広く生息し、林道とけもの道の交点付近に多く潜んでいるようです。マダニは成長や繁殖のために動物の血液を必要とし、吸血の際に分泌される唾液を介してライム病、回帰熱、ダニ媒介脳炎などのダニ媒介感染症が引き起こされます。西日本では近年、マダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群で多くの方が亡くなっており、北海道でもダニ媒介脳炎による死亡事例が報告されています。余談ですが、マダニは真空状態でも生存できる強靭な生物です。山菜採りや魚釣り等で野山へ出かける際は、長袖や長ズボンでマダニとの接触を避けましょう。 (壁村勇二・内海泰弘)

14 エゾモモンガ

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冬のモモンガ
 冬の森を歩いていると、木の根元の雪が茶色く染まった光景を見かけることがあります。その正体はエゾモモンガの排泄物で、その木を見上げると彼らが巣として利用しているキツツキの古巣や樹洞が見つかるはずです。  エゾモモンガは、北海道にのみ生息しており、本州以南に生息しているニホンモモンガとは別種です。夜行性で、日没直後に餌を探しに出かけ、日の出前には巣に戻ってくるという規則正しい生活を送っています。しかし、厳冬期には夜間の活動量が著しく低下し、日中の暖かいうちに餌を探すことが多くなります。 また、寒さをしのぐため、基本的には単独行動を好む彼らですが、冬の間だけ一ヵ所に集まり暖をとることも多いようです。北海道演習林内でも、ヤチダモに開いたキツツキの古巣に、この冬5頭のモモンガが身を寄せ合って暮らしています。ひと冬を共に過ごしたモモンガたちも、暖かくなると新天地を求めてそれぞれの旅路につきます。(村田秀介・智和正明)

13 カムイロキ山

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鷲府地区から見たカムイロキ山と天測点
足寄の市街から車で5分ほど陸別方面に進み,旧愛冠駅の方向に目を向けるとカムイロキ山(標高370m)のなだらかな山容が広がります.「カムイロキ」とはアイヌ語で「神様が座っていらっしゃるところ」という意味のようです.十勝地方にはカムイロキという地名が少なくとも二つあり,一つは足寄町愛冠,もう一つは新得町屈足の屈足湖に面する断崖にその名が付けられています.松浦武四朗の十勝日誌(1861年)に描かれた地図には新得町と足寄町にカムイロキの地名があり,アイヌの人々にとって特別な場所だったことがうかがえます.また,カムイロキ山は全国に四十数ヶ所あった天測点が設置された山でもあります.天測点(写真左上)とは星の観測から緯度経度を計算し三角測量のデータを補正するために設けられた標石で,現在は測量技術の発展によりその役割を終えています.カムイロキ山はアイヌの歴史・文化的に重要な場所であるとともに,地図の発達史の中で確かな役割を果たした山でもあるわけです.(中村琢磨・内海泰弘)

12 湯の滝

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湯の滝
雌阿寒岳の麓のオンネトー国設野営場から、歩道を1.5キロメートル進んだ場所に高低差20メートルほどの滝があります。滝上で湧き出る温泉が流れ落ちることから「湯の滝」と言われています。 流れの合間の黒い岩は酸化マンガンが堆積したもので、1950年代には鉱山として採取されていました。1980年代以降の調査により、マンガン酸化細菌の作用で二酸化マンガンが継続的に生成していることがわかり、2000年に「世界唯一の地表で酸化マンガン鉱床が生成中の地」として国の天然記念物に指定されました。希少性が認識される以前は、温泉利用を目的とした整備や、滝壺での観賞用熱帯魚の飼育等の観光開発が行われましたが、マンガンの生成現象や周辺の生態系への悪影響が心配されるため、入浴は禁止され、2013年からは環境省と住民の協力による熱帯魚の駆除が継続されています。湯の滝は、貴重な環境の保全と、教育研究の場としての利活用が望まれます。(山内康平・智和正明)

11 カラマツハラアカハバチ

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カラマツハラアカハバチの幼虫
8月下旬から9月にかけて,まだ他のカラマツが青々としている時期に,葉が枯れ落ちてしまったように見えるカラマツを目にすることがあります.これはカラマツハラアカハバチ(以下、ハバチの幼虫が集団でカラマツの葉を食べてしまったことが原因です.ハバチは蜂の仲間ですが、人を刺すような針はなく、人を攻撃することもありません。ハバチはもともと北海道にはいませんでしたが,道内にカラマツが植えられるようになってから移入してきたと考えられています.北海道では1930年頃に新冠町で初めてカラマツへの被害が記録され、1970年台後半に道内各地に大規模な被害が発生しました。2007年頃から十勝のカラマツ林でも見られるようになり、2012年には初めて北海道演習林でも被害を確認しました。 大規模な被害では、林分全体が茶色く枯れたようになりますが、立木が枯れることは極めて稀です。被害を受けると幹の生長量が低下しますが、食害による材質の低下はほぼないと考えられています。 (壁村勇二・内海泰弘)

Last-modified: 2019-05-21 (火) 17:18:13 (95d)
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