あしょろ自然誌

広報あしょろに掲載された足寄の自然に関する話題を紹介しています.

30 足寄川

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足寄川の上流部
 足寄川は、イユダニヌプリ山、フップシ岳、雌阿寒岳などの山々が源流となっており、茂足寄川、螺湾川、稲牛川等の支川を合流しながら流れる十勝川水系十勝川支流の一級河川で、全長約65kmあります。足寄町旭町で利別川と合流し、利別川は豊頃町で本流の十勝川へ合流して太平洋へと流れています。河川沿いの平坦地に広がる畑地には、小麦・小豆・ビート・トウモロコシ等が栽培され、丘陵地には牧草地があります。川沿いを進む国道241号を上流に向かうと、農地が徐々に狭まり、森林が広がって行きます。標高が高まるにつれて、人工林に植えられた樹種がカラマツからアカエゾマツやトドマツに変化し、また天然林も、広葉樹の林から、広葉樹に針葉樹が混ざる林へと変化していきます。足寄川の名前の由来は、アイヌ語のエショロペッ「沿って下る川」に由来しており、釧路方面から阿寒を越えて、この川に沿って十勝に出られたので、このように名付けられたと言われています。(壁村勇二・田代直明)

29 センダイムシクイ

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センダイムシクイ
 「焼酎一杯ぐいー」このフレーズを聞いたことはありませんか?野鳥のさえずりを人の言葉や意味のあるフレーズに言い換える“聞きなし”というものがあります.冒頭のフレーズはセンダイムシクイのさえずりを聞きなしたものです.センダイムシクイは夏鳥として日本に渡来し,北海道でも低山の落葉広葉樹林に生息しています.足寄の林からもそのさえずりが聞こえてきます.体長は12.5cmとスズメよりも小柄な鳥です.その小柄な体形と虫を餌にする性質から,ツツドリによる托卵の宿主として選択されることがあります.托卵とは他の鳥の巣に産卵し,自分の代わりにヒナを育ててもらう行動のことを言います.托卵で有名な鳥はカッコウですが,北海道では同じカッコウ科のツツドリによる小型の鳥への托卵も観察されています.センダイムシクイのさえずりが聞こえたら,同時に托卵をする鳥たちの存在も感じられる気がしますね.(藤山美薫・内海泰弘)

28 エゾイラクサ

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エゾイラクサ
 イラクサ科イラクサ属の植物で湿気がある山地に群生し,2m超に成長します.近い仲間を総称してイラクサとしばしば呼ばれます.この仲間は林内散策の時に注意すべき「危険な」植物です.茎に多数のトゲを持ち,その中は空洞でシュウ酸や酒石酸などを含む物質で満ちています.トゲの先端は触れると簡単に折れて刺さり,これらの成分が注入され痛痒さを引き起こします.似た症状が出る蕁麻疹はイラクサの漢名である「蕁麻」が由来とされています.このトゲによりイラクサは捕食者から身を守っています.シカが多い地域ではトゲの密度や長さが大きくなることが知られています.一方,人間はイラクサを活用してきました.トゲが少なく柔らかい新芽は山菜となります.茹でてお浸しや天ぷらにするとクセが無く,おいしく食べられます.また,茎からは強い繊維が取れるため,アイヌ民族は植物が枯れる秋に茎を集め,取り出した繊維を衣類などに利用しました.(山内康平・智和正明)

27 エゾノリュウキンカ

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エゾノリュウキンカ
 キンポウゲ科の多年草。本州北部から北海道に分布します。低地から高山の渓流沿い、湿った草原や湿地などに群生します。足寄でも、川沿いのいたる所に大群落がありましたが、近年はシカの食害により大幅に少なくなりました。漢字で「蝦夷の立金花」と書き、直立した茎に金色の花を咲かせることからこの名が付きました。北海道では、谷地に生息し丸い葉がフキの葉に似ていることから「ヤチブキ」とも呼ばれています。茎の高さは五〇〜七〇僂罵佞牢櫃、5〜6月にかけて黄色の花を咲かせます。一見、5〜6枚の花びらがついてるように見えますが、実はこれは萼(がく)と呼ばれるもので花びらではありません。キンポウゲ科には毒のあるものが多く、猛毒で有名なトリカブトもこの仲間ですが、本種は茎、葉、花とも食用になり、古くから春の山菜としておひたしや和え物、天ぷらなどにして食べられます。ただし成長して大きくなったものは下痢などの中毒症状を起こすそうなのでご注意下さい。

26 ギョウジャニンニク

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雪解け頃のギョウジャニンニク
 日本では近畿以北から北海道に自生するヒガンバナ科ネギ属の多年草で、北海道では昔からアイヌネギあるいはキトピロなどと呼び親しまれており、おひたしや酢味噌和えなど郷土色豊かな山菜として広く知られています。ギョウジャニンニクの名称は、修業僧(行者)たちが雪解けの頃、山野での修業中こっそり食べたことにちなんで呼ばれるようになったとも云われています。ギョウジャニンニクには、タマネギやニンニクなどのネギ属と同様に、抗血栓作用のある成分が含まれていることから、健康野菜として注目され、今では栽培物も多く出回っています。近年、足寄の山ではシカによる食害が目につくようになり、個体数の減少が危惧されます。我々も取り過ぎに注意して自然の恵みを楽しみたいものです。なお、ギョウジャニンニクと芽生えの姿が似ているスズラン・イヌサフラン・バイケイソウには毒性があり、毎年のように誤食による中毒事例が発生しています。お庭や野山で採取する際にはご注意ください。

25 セッケイカワゲラ

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セッケイカワゲラ
 全てが凍り付く寒い冬.しかし,生き物の気配の乏しい雪の上をよく観察すると,1cm程度の小さな虫を見かけることがあります.これはセッケイカワゲラと呼ばれる昆虫です.昆虫は変温動物なので寒いと体を動かせなくなりますが,セッケイカワゲラの仲間は体内に特殊な酵素系を持っているため逆に低温でないと動けません.手のひらに乗せて観察するとすぐに弱ってしまう変わった生き物です.セッケイカワゲラの幼虫は夏の間は水の冷たい沢で暮らし,晩秋に急速に成長し真冬に成虫となって地上に上がります.成虫は性成熟する前は体内の太陽コンパスという仕組みを使って上陸したところより沢の上流に向かい,2月下旬に性成熟すると今度は産卵のため沢に近づこうとします.卵は雪融けとともに沢の下流に運ばれることで生活史を繰り返します.セッケイカワゲラのように氷雪環境に特化した生物は氷河生物と呼ばれ,ユニークな生き方で過酷な環境にうまく適応しています.

24 ハクチョウ

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ハクチョウ
深夜から早朝に上空を飛び過ぎるけたたましい声や,V字に並んだ群れに秋の到来を感じます.カモ科ハクチョウ属の鳥をまとめてハクチョウと呼びますが,足寄で見るのは主にオオハクチョウとコハクチョウです.ユーラシア大陸で夏を過ごし,越冬のために日本へ親子で渡ります.長距離を移動する渡り鳥としては最大級の体を持ちます.成鳥は全体が白い羽ですが,幼鳥は灰色の羽を持ちます.オオハクチョウとコハクチョウは体の大きさと嘴にある黄色部と黒色部の割合で識別できます.活込ダムや仙美里ダムのダム湖では数十羽の群れが羽を休める姿を見ることができます.春には渡りに備えて近くの畑でデントコーンの落穂や小麦をついばむ姿が見られます.小麦にとって食害ですが,群れが滞在することによる大量のフンが窒素の供給源になっているという報告もあります.のどかな姿には野生動物との共存という問題もはらんでいます. (山内康平・田代直明) 

23 オオセンチコガネ

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オオセンチコガネ
 コガネムシ上科センチコガネ科の甲虫で,日本全土に分布します.体長十六〜二十二弌ヂ里牢櫃,体色は金赤,金緑など金属光沢があり,バリエーション豊富です.コレクションとして標本にしている採集家も少なくありません.腹部には発音器官があり,触ると「ギーギー」と鳴き威嚇します.この仲間は,主に動物の糞や死骸を食べることから「糞虫」と呼ばれています.山で動物の糞に群がってる光景を見かけた人もいらっしゃるのではないでしょうか.汚い虫と思うかもしれませんが,オオセンチコガネは糞の分解を通じて森の掃除屋になるとともに植物の種の散布も手伝っています.春から秋にかけて活動し,交尾をしたメスは糞を地中に引き込み,その中に産卵します.卵から孵化した幼虫はそれを食べて成長します.名前にある「センチ」とは便所の古語である「雪隠(せっちん)」が変化した言葉で,糞によく集まることから付けられました. (鍜治清弘・内海泰弘)

22 野ねずみ被害

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食害されたカラマツの根元
 足寄町の人工林はカラマツが主体ですが、昭和四十年代頃から野ねずみによるカラマツの被害が多数確認されています。野ねずみは食べ物がなくなる冬から早春にかけてカラマツ等の樹木の根元や幹の樹皮を食べます。軽度の食害では枯れることはありませんが、食害が根元を一周すると、樹木は水や栄養を根から葉に送ることができなくなるため、数年で樹木は枯れてしまいます。このため、カラマツの植栽を行う際は野ねずみの生息場所となる枝条のたい積を避けることが行われています。さらに、ヘリコプターによる殺鼠剤の散布も行われています。近年は野ねずみの生息数が増加傾向にあり、幼齢のカラマツだけでなく伐期を迎えた壮齢のカラマツや、これまであまり被害のなかった広葉樹にも被害の広がりが見受けられます。そのため、近年では野ねずみ被害に強いとされるグイマツ雑種F1やクリーンラーチ等が植栽されることもあります。 (壁村勇二・智和正明)

21 植物のフェノロジー

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サワシバの若葉
 5月に入り,気温の高い日が増えてきました.北海道のように長く寒い冬がある地域では,春になって生き物が動き始め,日に日に木々の緑が鮮やかになる様子が印象深いです.このように季節に応じて動植物の状態が周期的に変化することをフェノロジー(生物季節)といいます.おなじみのサクラの開花日もその一つですが,他にもアジサイやタンポポの開花,カエデやイチョウの紅葉など,気象庁では1953年より様々な植物のフェノロジーが観測されています.これらは季節の進み方を過去と比べるための指標となり,最近では温暖化の影響の評価にもよく使われています.春の訪れにともなう植物の反応は様々で,フクジュソウのように3月末には花を咲かせるものもあれば,ヤチダモのように6月上旬になってようやく葉を広げるものもあります.毎年の四季折々の楽しみに,身近にある色々な草木の変化をカレンダーに書きとめてみてはいかがでしょうか.(中村琢磨・田代直明)

Last-modified: 2021-06-02 (水) 16:34:30 (546d)
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