あしょろ自然誌

広報あしょろに掲載された足寄の自然に関する話題を紹介しています.

39 エゾノタチツボスミレ

sエゾノタチツボスミレ画像.jpg
エゾノタチツボスミレ
 草丈が20〜40cmになる大型のスミレで,岡山県以北に分布し,北海道ではほぼ全域に見られます.山地の明るい場所を好み,上部では5冂になるハート形の葉をつけ,茎が枝分かれする姿は存在感があります.5〜6月には淡い紫から白まで変化に富んだ色の花を咲かせます.2cmほどの花をのぞくと左右の花弁(側弁)に白い毛があります.下側の花弁(唇弁)にある紫の筋状の模様は蜜標と言われる昆虫に蜜の位置を示す模様です.スミレの仲間は花の後ろ側に伸びた「距(きょ)」と呼ぶ部分が特徴ですが,本種は短めで裏側に張り合わせたような筋があります.中に蜜を分泌し,距に入る昆虫に入口のおしべから花粉がついて他の株の花に運ばれます.種まきでも昆虫の力を借ります.熟した果実は,半分開いた豆の鞘のような形になり,閉じる力で種子を押し出します.落ちた種子にはアリが好む物質(エライオソーム)が付いており,餌として種子ごと遠くへ運んでもらいます.(山内康平・田代直明)

38 エゾシカ

夜間調査中に目撃したエゾシカ.jpg
エゾシカ
 ニホンジカはシカ科シカ属の偶蹄類で、北海道から沖縄県慶良間諸島までの日本と、朝鮮半島および中国、台湾、ベトナム、ロシア沿海州に分布しています。エゾシカは北海道のみに生育するニホンジカの亜種です。シカ科の仲間は枝分かれした角を持つのが特徴です。オスジカの角は毎年春に落ち、春から夏にかけて新しく伸びます。シカの繁殖期は秋で、出産は5月中旬に始まって6月にはピークを迎えます。足寄町に限らず、日本各地でシカの生息頭数は増えており、森林や農林作物に深刻な被害をもたらしています。足寄町での令和2年度の農作物被害額は9千700万円で十勝地方の中でも最も大きな値となっています。九州大学北海道演習林では、エゾシカの森林被害の科学的な制御を目指した基礎研究として、工ゾシカ生息数のモニタリングや被害調査等を継続的に行っています。また、足寄町から依頼を受けて、演習林内でのシカ捕獲事業を実施しています。(壁村勇二・榎木 勉)

37 オオワシ

オオワシ.jpg
オオワシ
 冬に足寄町の空を見上げると,時折,白と黒の羽をもつ大きな影が目に入ります.オオワシは,冬鳥として北日本に渡来し,主に沿岸部で越冬する日本最大級のワシです.翼を広げた幅は2mにもなり,黄色く大きなくちばしと白い肩,くさび型をした白い尾羽が特徴的なので,遠くからでも比較的簡単に見つけられます.魚類を捕食し,時には海鳥やアザラシ等の漂着死体も採餌します.山林では,動物の死体を狙って飛来する様子を観察することもできます.大きな体で晴れた冬の空を飛翔する姿は,十勝ならではの素晴らしい光景です.一方,こうした食物網の頂点に立つ生物は,一般的に環境の変化に弱く,本種も絶滅危惧種に指定されています.開発による繁殖地の減少,漁業や狩猟残渣への餌資源の依存,道路や鉄道,風力発電施設での事故など,人間の社会活動から様々な問題が生じており,保全のための地道な努力が続けられています.(藤山美薫・田代直明)

36 ドングリの冬越し

ドングリの冬越し.jpg
ドングリ
 11月に入ると木々たちの紅葉や実りもひと段落し,いよいよ冬の到来を待つばかりです。九州大学の森ではミズナラの森を人工的に作る試験を毎年行っています。ミズナラのドングリは年によって豊作と凶作がありますが今年は豊作年のようです。ドングリたちは秋に根を出し(写真),春になると一斉に芽吹いて成長を始めますが,。乾燥には弱く,湿った環境でないと発芽できません。また冬を迎えるネズミやリスなど動物たちの格好の餌にもなってしまいます。しかし動物たちに食べられるのは必ずしも悪いことではなく,例えばネズミやリスは冬に備えてドングリなどの食料を土に埋めて後日食べる貯食という行動をとりますが,忘れられて食べられずに発芽することがあります。この行為のおかげでドングリは親の木から遠くに運ばれ分布を広げることができ,土に埋められることで乾燥を防ぐこともできます。エサとなりつつもその中で生き残る。死中に活を求めるとは正にこのことのようです。(緒方健人・内海泰弘)

35 ギンゴケ

ギンゴケ画像.jpg
ギンゴケ
 歩道上や縁石沿いなどでたくましく生きるコケ植物,ハリガネゴケ科のギンゴケを紹介します.全国でよく見られる普通種で,ビルの屋上や富士山の頂上にも生育し,分布は極地から熱帯までと全世界に広がります.高さは1cm程度で,密集してこんもりとした銀緑色の塊を作ります.ルーペで見ると0.5〜1mm程度の広卵形をした葉が茎に接しています.葉の半分近くは葉緑体がなく透明で,銀色に見えます.この部分は透明尖と呼ばれ,光を反射し水分の蒸発を防ぐ機能があります.またコケ植物には,周囲の環境によって体内の水分量が変わり,乾燥しても枯死せずに休眠することができる変水性という特徴があります.この透明尖や変水性により,常に湿潤でない場所にも生存できます.また茎の先端部は脱落しやすくなっており,脱落した茎から芽を出します.仮根からも発芽でき,さらに無性芽を多量に生じる能力もあり,幾通りもの栄養生殖の手段を持つことが広範囲で分布できる要因と考えられます.(山内康平・田代直明)

34 アヤメ

林内に咲くアヤメ.jpg
アヤメ
 日本では九州から北海道に自生するアヤメ科アヤメ属の多年草で、山地のやや乾いた草原に生えます。足寄では6月上旬から7月中旬頃まで市街地はもとより山林でも花を見かけます。名前の由来は、葉の付き方が文目模様であることや、外花被片に網状の模様があるので綾目になったようです。なお、万葉集などで、菖蒲と書いて「あやめ」と読んでいたのはショウブ科の「ショウブ」のことです。アヤメによく似たヒオウギアヤメは湿地帯にあり、釧路湿原や霧多布湿原で見られます。また、何れ菖蒲か杜若(いずれあやめか、かきつばた)ということわざがあります。アヤメとカキツバタは区別がつきにくく、どちらも優れており優劣がつけにくく選択に迷うという意味があります。足寄のアイヌ語では「イチャニウ・アパッポ(鱒・花の意)」と言い、この花が咲けば魚が上って来る頃であり、魚をとる仕掛け梁の準備をしていたので、このように名付けられたと言われています。 (壁村勇二・内海泰弘)

33 フキノトウ

フキノトウ.jpg
フキノトウ
 春の山菜といえば?タラの芽やギョウジャニンニクなどと並んで,フキノトウを思い浮かべる方も多いと思います.フキノトウとフキは別の植物ではなく,フキの花茎という部分のことをフキノトウと言います.フキの開花前の花が苞(ほう)と呼ばれる葉に似た器官に包まれた状態で地上に出てきたものが花茎,つまり,フキノトウです.フキは自家受粉を避けるために雌雄異株の特徴をもっています.フキノトウの中を覗いてみて,白い糸状の花があれば雌株,黄色い筒状の花があれば雄株になります.フキは一つの地下茎から複数のフキノトウを出すので,群生している場合,近隣同士のフキノトウは同一性の株だと考えられます.もしフキノトウを食べる機会があれば,雌株と雄株の味を比べてみるのも面白いかもしれませんね.ただし,フキノトウは長い冬眠から目覚めたヒグマにとってもご馳走になります.山菜採りに出かける際はくれぐれもご注意ください.(藤山美薫・田代直明)

32 フッキソウ

フッキソウ.jpg
フッキソウ
 春先に足寄町内の森を散策していると,雪解けとともに林床から高さ2,30cmほどの常緑の植物が現れているのを多数目にします.一見草のように見えますが,これはツゲ科フッキソウ属に属する常緑の亜低木で北海道から九州までと中国に分布します.漢字では「富貴草」が当てられており,年間を通して緑の葉が茂る様をとこしえの繁栄にたとえたものと言われます.寒さや乾燥に強いことに加え,日射が少なくても成長できる性質が知られています.庭園では地表を覆うグラウンドカバープランツに利用され,法面の被覆緑化への利用も行われています。3〜5月に咲く花は花弁が無く,目立ちませんが,白く熟した果実は林床に映えます.アイヌ民族は冬に鹿が群れて食べる様子からユクトマキナ(鹿が群れる草)と呼び,葉を温めて温湿布としたり,果実を胃腸薬として煎じて利用しました.成分としては複数のアルカロイドが含まれていることが分かっています.(山内康平・内海泰弘)

31 エゾサンショウウオ

エゾサンショウウオ.jpg
エゾサンショウウオ
 サンショウウオ科サンショウウオ属。日本固有種で北海道(島は除く)に分布します。水場が近い平地から山地の森林に生息し、体長十一〜二十僂蚤凌Г楼迭貎АA安の指は4本、後ろ足の指は5本になります。主に小さな昆虫やクモ、ミミズなどを食べますが、幼生時期には幼生同士の共食いもみられます。この仲間には、流水性と止水性の産卵型があり本種は止水性で雪解け水が流れ込むような池や沼、または湧き水が流れる沢沿いの緩やかな流れや溜に産卵します。産卵時期は4〜5月頃で、卵のう(卵を包む袋状のもの)の長さは二十儖幣紊砲覆蝓△修涼罎貌鷭宗蘇監鷭集弔陵颪入っています。卵は約1ヶ月程度で孵化し、その年のうちに成体となり上陸しますが、山間部の気温の低い場所や水温が低い所に生息するものは翌年に変態するものもいます。サンショウウオやイモリなどの有尾両生類は高い再生能力を持ち、尻尾や指が切れても再生できます。 (鍜治清弘・智和正明)

Last-modified: 2022-11-01 (火) 17:20:09 (29d)
Copyright 2005-2008, Ashoro Research Forest, Kyushu University, All Rights Reserved.
トップ   編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード   新規 一覧 単語検索 最終更新   ヘルプ   最終更新のRSS