あしょろ自然誌

広報あしょろに掲載された足寄の自然に関する話題を紹介しています.

48 ラワンブキ

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螺湾(らわん)川沿いのラワンブキ群落
 みなさんご存じの煮物にしても肉詰めにしても柔らかく美味しいラワンブキ。分類上はアキタブキ(キク科)に属しますが、螺湾川沿いのものが特に大きく生育することから(高さ2-3m、茎の直径10cm)ラワンブキと呼ばれ、2001年には「次世代に引継ぎたい北海道ならではの宝物」である北海道遺産に選定されました。また「ラワンぶき」はJAあしょろの登録商標ともなり、町の資源として保護されています。 ラワンブキがここまで大きくなる理由はよくわかっていませんでしたが、九州大学演習林と足寄動物化石博物館の共同研究で、雌阿寒岳のふもとから流れる螺湾川の水が、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウムといった植物の成長に必要な栄養分を他の河川より約10倍程度多く含み、それらが下流の川沿いの土壌に入り込んでいることが要因の一つとして明らかになりました。ミネラルが豊富で食物繊維も多く含まれるラワンブキ、春が待ち遠しいです。(井上幸子・田代直明)

47 サラシナショウマ

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サラシナショウマ(晒菜升麻)
 夏から秋にかけて林道沿いの明るい場所で、他の草より飛び出た白いブラシのような花が目に付きます。よく見ると多数の雄しべをつけた小さな花が集まっています。草丈は1〜1.5mほどになり、葉は長い柄を持ち2〜3回3出複葉です。若葉は山菜として利用され、あく抜きのため茹でて水に晒すことがサラシナ(晒菜)の由来とされています。また、根は「ショウマ(升麻)」という生薬として使われ、漢方では解熱・解毒・浮腫抑制薬として乙字湯、升麻葛根湯などに使われてきました。「ショウマ」と付く植物は他にも多くあり、演習林で記録があるものだけでもサラシナショウマと同じキンポウゲ科のルイヨウショウマ、ユキノシタ科のトリアシショウマ、バラ科のヤマブキショウマがあります。分類学的には遠い種類ですが、白く穂状の花やギザギザで複葉の葉など、「升麻」の起源植物に似た共通の見た目を持っています。(山内康平・市橋隆自)

46 イワブクロ

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イワブクロ
 オオバコ科イワブクロ属の高さ10〜20cmの多年草です。北海道〜東北の高山に分布し、6月中旬〜8月に花を咲かせます。葉は4〜7cmの先が尖った長楕円形で、対生しています。れき地や岩場に見られ、茎の上部にまとまって咲く筒状の花には、白く長い毛が密生します。岩場に生え、花が袋状になっていることから「イワブクロ」と名付けられたと言われています。また、苫小牧市の樽前山で多く見られることから、別名「タルマイソウ」と呼ばれることもあります。根茎によって地中で繋がっているため、一か所にまとまって生えています。写真は雌阿寒岳の登山道で撮影したものです。大きな岩の割れ目から顔を出し、元気に花を咲かせている様子に、強さや逞しさを感じることができます。これから夏になり、本格的な登山シーズンに入ります。雌阿寒岳に登られる際には、岩場のイワブクロを探してみてはいかがでしょうか。 (藤山美薫・榎木勉)

45 エゾエンゴサク

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エゾエンゴサク
 春の雪解けとともに様々な草花が地上に姿を現します。うすい青や紫色の花を咲かせるエゾエンゴサクもその一つです。エゾエンゴサクはケシ科の多年草で低地や山地の湿った落葉樹の林や草地に見られます。背丈は10〜25センチ程,葉は1〜2回の3出複葉で小葉は線形から卵形まで様々です。細長い独特な形をした花をブドウの房のように総状につけます。花の時期は4〜5月で,この短い期間に光合成を行いマルハナバチなど昆虫の訪花を受け結実させます。夏になり木々が葉をひろげる頃には地上部を枯らし,地下の塊茎で養分を蓄え次の春を待ちます。この時期が早ければ気温が低く昆虫の訪花がなされず,遅ければ木々の葉に覆われ光合成が十分にできなくなるでしょう。エゾエンゴサクのように早春にいち早く花を咲かせ夏には消える植物を春植物といいますが,その儚い様からスプリングエフェメラル(春の妖精)とも呼ばれています。(緒方健人・田代直明)

44 ヤドリギ(寄生木)

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 ヤドリギが着生した木の枝
 冬のドライブ中やスキーのリフトから落葉した木を見ていると写真のような緑の丸い塊りを目にすることがあります.これは寄生植物のヤドリギです.他の木の幹や枝に吸器と呼ばれる器官を侵入させて水や養分を吸収しながら,自身も葉緑体を持ち光合成でも栄養を得るため,「半寄生」と言われます.ヤドリギが着生した宿主の枝は落下する危険があるため,街路樹などでは除去が必要です.様々な落葉広葉樹を宿主にしますが,足寄ではミズナラの梢でよく見かけます.黄色や橙色(品種アカミヤドリギ)の果実は鳥が好んで食べます.ネバネバの果肉で包まれた種子をフンと共に宿る木に落としてもらい子孫を残します.発芽後は二又に別れながら球状に枝を張り,先端に長さ3〜8cm程度で肉厚の葉をつけます.アイヌ語ではニハルと呼ばれ,枝から採取したデンプンを食用にしました.冬でも緑を絶やさない様子から洋の東西を問わず繁栄の象徴とされてきました.皆さんも探してみませんか.(山内康平・内海泰弘)

43 エゾユキウサギ

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冬毛のおとなウサギ(上)と夏毛のこどもウサギ(下)
 エゾユキウサギはウサギ目ウサギ科のウサギ属ユキウサギの亜種で,北海道の平野部から山間部まで広く生育するユキウサギの仲間です。ウサギの特徴である大きな耳を持ちますが,本州以南に生息するノウサギに比べると小さめです。これは2022年7月あしょろ自然誌「体の大きさの違い」で記述したベルグマンの法則にあてはまり,耳からの体温の放出を抑えるためと考えられます。毛色は冬には雪にまぎれるほど真っ白になり,夏には茶色になります。冬でも夏でも山の中で探し出すのは至難の技です。生き物には,他のものに色や様子を似せることで敵から見つかりにくくし,自分の安全を守るものがいます。ウサギも自然界で少しでも安全に生き延びていくために,季節ごとに衣替えをしているのでしょう。また大きな足による走力は大変強いうえ,大きく飛ぶことも出来ます。今年の干支は兎(ウサギ),野山で駆け回るウサギを見つけに出かけてみるのもいいですね。(井上幸子・榎木勉)

42 樹木の落葉

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樹木の落葉
足寄の森には、冬に葉を落とす落葉広葉樹が自生し、また落葉針葉樹であるカラマツが多く植えられています。木々が落葉し山々から色がなくなる冬の光景は、どこか寂しく感じられるかもしれません。樹木の葉は光合成を行い、太陽光のエネルギーで二酸化炭素と水から糖を作ります。この糖を原料に幹や葉などが作られますが、冬の気温が低いと光合成ができなくなる一方、冬を越せるしっかりした葉を作るには原料の糖=コストがかさみます。ですので落葉樹は、ひと夏しか持たない低コストの葉を作り、冬に落とすという無駄のない生き方をしているわけです。ではトドマツなどが冬も葉を着けているのはなぜかというと、標高が高い場所などで、さらに夏が短く一年の光合成の稼ぎでは低コストの葉すら作れない場合、逆に高コストでも寿命の長い頑丈な葉を少しずつ作り、複数年で減価償却しているからだと考えられています。寂しい冬の光景からも木々の生き方の違いが見えてきますね。(藤山美薫・田代直明)

41 エゾライチョウ

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エゾライチョウ
この夏、森の中でエゾライチョウの親子を見かけることがありました。エゾライチョウはキジ目キジ科の鳥で、日本では北海道にのみ生息します。足寄町では町の鳥にも指定されています。全長は36cmほど、ずんぐりとした丸っこい体型で体全体が黄土色、茶色、白色などのまだら模様で地味な色をしています。長距離を飛ぶことは少なく、地上を歩いて落葉広葉樹の冬芽や果実の他、幼鳥の頃は昆虫などを食物とします。冬の間に単独もしくは群れで生活していたエゾライチョウは、4月頃につがいを形成し5月下旬から産卵し抱卵します。6月中旬以降になると雌と幼鳥からなる親子連れで森を歩く姿が見られるようになります。このような家族群は9月になると解消され、それぞれ単独もしくは新たな群れを形成し冬を迎えます。この夏に見かけた親子もそれぞれが独り立ちし新たな生活を始めたことでしょう。(緒方健人・榎木勉)

Last-modified: 2023-11-15 (水) 14:49:11 (18d)
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