御挨拶

 九州大学では,創立以来一世紀にわたる歴史の中で,先人たちの努力によりアジア地域を中心とした膨大な学術標本を収集し,教育研究に活用してきましたが,これら貴重な学術標本を一元的に管理・運用し,教育・研究への効率的活用を図るとともに,広く市民の皆様に公開することを目的として,九州大学総合研究博物館を本年4月に設立いたしました.その九州大学総合研究博物館による「九州大学の学術研究 過去・現在・未来」の第1回目の公開展示として,「森・水・人−学術の森による森林生態圏科学の展開―」のテーマにより開催いたします.


 21世紀を目前に迎え,今日の科学技術の進歩には著しいものがありますが,一方では,世界人口の急増,エネルギー資源の枯渇,地球温暖化,酸性雨など複雑で深刻な問題に直面しております.これらの問題の解決には,森林が大変重要な役割を担っていることが明らかになりつつあり,多様な森林の保全,育成、資源利用に関する研究,さらには森林と人間活動との係わりに関する研究が,今最も強く求められているものと考えます.

 九州大学農学部附属演習林は,1912年(大正元年)に樺太(現在のサハリン州)に創立されて以来,今日まで約90年にわたり,それぞれの演習林の特徴を活かした実践的な森林教育,森林研究を行い,多くの業績を残してきました.森林の研究には長い年月が必要であると言われていますが,演習林では150年にもおよぶ息の長い研究をはじめとする「22世紀の森」を見据えた森林研究が地道に行なわれております.今回の展示では,このような「学術の森」である演習林で行われてきた教育・研究とその将来展望を紹介し,皆様方と将来の森林について考えてみたいと存じます.
 

 九州大学は、現在、21世紀への更なる飛躍を目指し、大学改革、キャンパスの統合移転、病院の再開発等の大きな事業を推進しています。これらの事業は本学の努力だけで達成できるものではなく、市民の皆様の御支援、御協力があって初めて実を結ぶと考えております。この展示をきっかけに九州大学に対する一層の御支援、御鞭撻をお願いする次第です。

                平成12年5月16日  

九州大学総長 杉岡 洋一  


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