樹冠への接近

  

 森林の動きを理解するためには,そこで生活する樹木がどのように成長するのかを調べる必要があります.彼らは幹や枝を作り葉を上へと持ち上げ,光を出来るだけ多く得る努力をしています.この樹木の葉や枝が集まっている部分を樹冠,樹冠の集まりを林冠と呼びます.それぞれの樹は,光を効率よく得るために,樹冠の形に様々な工夫をこらしています.

これらを調べるためには,我々が林冠まで接近しなければなりません.そこで林の中に足場を設け,林冠の環境と樹冠の動きを調べています.

  

 

●林冠観測足場

単管パイプを用いた高さ11mの足場です.林冠に接近するためには様々な方法が考えられていますが,この方法はどの枝先にも樹にダメージを与えることなく接近できる安価な方法です.普段見ることの出来ない,森林に生育する樹木の枝先を簡単に観察することが出来ます.

林冠観測足場内の樹冠と光量の関係
等値線上の数字は明るさを示す値です.シラカンバの樹冠は,最上層でほどんどの光を利用しており,暗い所では葉をつけることができません.耐陰性の強いイタヤカエデの稚樹は5%以下の光環境でも生存しています.ホオノキは大きな葉をまばらにつけており,樹冠内の光の減衰がゆるやかになっています.このように,樹木の種類と林内の光の分布は強く関係しています.

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『森・水・人』−学術の森による森林生態圏科学の展開