今日において,地球環境問題は様々な要因が複雑に絡み合い,それらの相互影響を把握することは各分野の専門家においても困難となっており,グローバルな変動とローカルな変動の相互作用の重要性が認識されつつある。例えば,ここ数十年間の工業化と森林や農地利用に関する歴史的な大転換は,過去1500年以上にわたる日本の生態系利用様式を根本的に変更するものであり,その影響は流域全体,さらには海域にまで及んでいる。また,日本と同様な劇的な生態系変動は,現在多くの発展途上国で生じつつある。すなわち,グローバルな環境変動の影響評価において,ローカルな流域圏環境における総合環境研究が必要とされている。
従来のフィールド系大型プロジェクトにおいては,複数の遠隔地における作業が多いため,ロジスティクス関連の時間やコストがかさみ,研究グループ間の調整作業や,統合作業が難しくなりがちであった。また,各測定項目分野における専門研究の成果と比較して,その地域固有の環境問題の解明や,成果の現地還元については不十分な事も多かった。このような状況を打開するためには,測定項目を優先する直列進行型の地域分散型研究システムから脱却し,並列進行型の環境全体にわたる俯瞰的な見方を醸成する地域集中型科学的アプローチが必要とされる。
そこで,高山から深海まで6000mの標高差の中央に位置する富山大学において,富山の水循環を軸に,地域環境教育研究拠点“富山システム”を構築し,ネットワーク化していくことで,グローバルな地球環境議論に必要な様々な角度からの測定項目をリンクさせた密度の高い地域密着型フィールド研究を進める。グローバルな地球環境研究を切り開いていくには,細分化した専門分野の人材よりも,複数の専門領域で研究を遂行できる人材こそが必要であるという視点から人材育成を進める。世界トップクラスの分析・統合能力を有した国際的にユニークな研究中心を形成すると同時に,地域社会への貢献も目指す。
地球の変動帯(造山帯)に成立した日本の縮図ともいえる富山は,水平距離にして100kmという狭い範囲内に,冬季の積雪が10mを超える標高3000mの立山連峰から,幾多の河川が織りなす水圏生態系が形成され,工業・農業が発達した富山平野をはさんで,海産資源に富んだ水深1000mを超える富山湾まで地形的に連続している。高山から都市,海までがコンパクトに位置し,マクロの空間スケールにおける地域性の違いを排除し,純粋に高低の影響が評価できると同時に,系全体を生物圏研究のフィールドとして“管理”し“理解”することに適している。3000mを超える日本海の海床を考慮すると,富山大学は高度差6000mの中間地点に位置し,立山山頂部には大学研究施設があり,富山湾の深海は精力的に探査されている。すなわち,雨の生成から流下,地下浸透,人為影響付加,海域動態までを同時並行で解析でき,水文・地文の観点から奥行きのある生物圏の解析・考察が行える。
富山の上流域においては,急激な温暖化,越境大気汚染の影響を直接的に受けており,下流域においては上流からのCd等の重金属によって汚染された土壌が広範囲に分布しており,森林で生成される土砂や有機物,工業地域から排出される様々な汚染物質の生態影響も無視できない状況にある。さらに,水循環における森林と海洋の直接的な結びつきも変動帯地形の特徴といえる。このような状況は,汚染物質の環境影響評価手法の開発,さらにはレメディエーション技術の開発においては最適な環境にあり,実用化プロジェクトを推進する。フィールド計測技術について,環境中の同位体・微量成分・電磁気分析,遺伝子解析,電気化学的バイオセンサー,遺伝子アレイや細胞内情報伝達系の可視化プローブ,野外生理学,情報システム技術などにおいて当拠点は世界的な水準にあるが,共同利用システムの確立によって高度な環境技術を分野横断的に活用できる人材育成を行う。
これらの研究成果を地域住民の安全・安心につなげるシステムの構築,産業界への還元,環境問題の現状に対する正しい理解,さらに環境工学的解決手法の開発に結びつけ,富山に適した環境保全技術の提案・実現をすすめる。そのため,博士レベルの深い理解を持ち,地域住民の漠然とした不安に積極的に応えうるコミュニケーションスキルを持った環境インタープリターの養成を行う。
従来のフィールド系大型プロジェクトにおいては,複数の遠隔地における作業が多いため,ロジスティクス関連のコストが嵩み,研究グループ間の調整作業や,統合作業が難しくなりがちであった。また,各測定項目分野における専門研究の成果と比較して,その地域固有の問題の解明や,成果の現地還元については不十分な事も多かった。このような状況を打開するためには,直列進行型の研究システムから脱却し,並列進行型の環境全体にわたる俯瞰的な見方を醸成する科学的アプローチが必要とされる。本研究拠点では,高山から深海まで6000mの標高差の中央に位置する富山大学において,富山の水循環を軸に,地域環境研究拠点“富山システム”を構築し,ネットワーク化していくことで,グローバルな地球環境議論に必要な様々な角度からの測定項目をリンクさせた密度の高い地域密着型フィールド研究を進める。フィールドステーションとしての富山大学は,世界トップクラスの分析能力を保有している。都市域環境を含んだフィールドサイトとして世界的にもユニークな研究中心を形成し,地域社会への貢献も目指す。
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富山は,地殻プレート運動により造山活動が活発な変動帯の上に位置し,モンスーンと日本海の影響を受け,地球上においても例外的に水資源に恵まれた環境にある。このような温暖・多湿環境は,安定帯に位置する欧米においては想定することも難しいが,日本の美しい景観を生成する要因となっており,多様性の高い生物群集,森林を主体とした緑の国土,独特の稲作文化,沿岸の工業地域の発展をもたらし人間と生物活動の双方に大きな影響を与えている。その一方で,洪水,豪雪,汚染物質の拡散など災害要因としても作用する。本拠点は,生活環境を理解し,適切な管理を行うための,水循環とそれに付随する多様な環境現象を探り,その結果明らかになった環境問題についての具体的な解決方法を開発する。これら一連の研究システムは,変動帯に位置する多くのアジアの国々への適用を考える上でも非常に重要である。
地球の変動帯(造山帯)に成立した日本の縮図ともいえる富山において,富山大学は高度差6000mの中間地点に位置している。立山山頂部には大学研究施設があり広域大気汚染や気候温暖化の研究が進められ,富山湾深層水のモニタリングによる日本海海洋循環の解明が行われ,ほぼ全域にわたって携帯電話を利用したリアルタイムネットワークシステムの構築が可能である。下流域においては上流からのCd等の重金属によって汚染された土壌が広範囲に分布しており,工業地域から排出されている様々な汚染物質の生態影響も無視できない状況で,汚染物質の環境影響評価,さらにはレメディエーション技術の開発においては最適な環境にあり,現在いくつもの実用化プロジェクトが進行している。すなわち,雨の生成から流下・浸透,人為影響付加,海域動態までを,同時並行で解析でき,生物学的・気候学的影響,地質・地史・人為影響の観点からの,生物圏の多次元的な解析・考察が行える。本拠点は,様々なフィールド計測技術,同位体・電磁気分析,電気化学的バイオセンサー,遺伝子解析,細胞内情報伝達系の可視化プローブ,野外生理学,情報システム技術などにおいて世界的水準にあるが,相互利用体制の確立によって高度な環境技術を分野横断的に活用できる人材育成を行う。
これらの研究成果を地域住民の安全・安心につなげるシステムの構築,産業界への還元,環境問題の現状に対する正しい理解,さらに環境工学的解決手法の開発に結びつけ,富山に適した環境保全技術の提案・実現をすすめる。そのため,博士レベルの深い学識を持ち,地域住民の漠然とした不安に積極的に応えうるコミュニケーションスキルを持った環境インタープリターの養成を行う。
本拠点の目的の一つは,日本人が当たり前に感じている世界でも希な自然景観の価値,そして生じている環境問題について,多方面からの並列研究システムによって再発見・再定義を行い,国際的に発信すること,そしてそのために国外から多くの研究者に富山を研究サイトとして選択してもらい,世界的な生物圏研究拠点を確立することである。恒常的な教育研究活動を進めるために,特別な大学付属研究組織を作るのではなく,本拠点がコアとなり,周辺の研究・調査機関と連携し,地域に密着した柔軟性かつ実効性のある長期運営を目指したローコストな国際的教育・研究組織としての「富山システム」の構築が期待される.このような地域一体型の拠点形成は,富山大学のような地方大学においてこそ,効果的に機能すると考えられる。
自然環境は究極の分散・並列進行形態であるので,それに応じられるデータ処理システムと成果の表現手法が必要とされ,国際的な総合環境研究拠点の構築のためには,その成果が外部から容易に参照できる必要がある。そこで,野外観測システムをフィールドサーバー化し,ネットワーク化すると同時に,様々な環境問題や地域開発にともなう地域住民の漠然とした不安に積極的に応えうる「社会情報環境科学」の構築をめざす。経済通産省“情報大航海プロジェクト”などと関連させた富山における多次元環境マップを作成し,Web上で組織化し,研究成果が外部から容易に参照できるようにする。英語版の作成と同時に,市民レベルでも理解しうる解説ページも編集する。測定データの継続的な公開など,変動の激しい大学環境では不向きな作業は,県や市の博物館などの施設と協力し,利用環境を整備する。これらのデータは,他大学・他機関の研究グループからも活用出来るよう整備する。
<2006年12月に久米が作成した某プロジェクト企画書案より抜粋.良くできたホラ話だと思いますが,研究関連を担当されている理事や事務の皆様からの評価は低かったようです.私はこういうホラ話は好きです.万が一採用されていたら,その後の人生が変わっていたかもしれません.>