Environmental factors influencing the load of long-range transported air pollutants on Pinus amamiana in Yakushima Island, Japan
屋久島のヤクタネゴヨウへの広域大気汚染の負荷量に影響を及ぼしている要因
久米篤a,永淵修b,阿久根卓c,中谷暢丈d,智和正明e,手塚賢至f
a 九州大学北海道演習林,b滋賀県立大学環境科学部,c鹿児島県環境技術協会,d酪農学園大学環境システム学部,e九州大学宮崎演習林,fヤクタネゴヨウ調査隊
要旨
東アジアの工業化の進展につれて,大量のオゾンや酸性エアロゾルが日本に輸送されている。屋久島と大陸の間には工業地域や他の汚染源が無いので,屋久島は中国から長距離輸送されてくる越境大気汚染の直接的な影響を受けている。近年,屋久島のヤクタネゴヨウ(Pinus
amamiana)の衰退が著しく,大気汚染の実態を調査した。冬季に大量の大気汚染物質が確認された。冬季の大気オゾン濃度の日平均値はほぼ100ppbに達してした。海洋由来ではない(工業地域からの)硫酸塩(nss-SO42-)が,島の北西部の針葉表面に大量に沈着し,2月のSO42-の沈着速度は11月よりも非常に速くなっていた。SO42-増加の半分は非海塩性で,2月の非海塩性SO42-の沈着速度は11月よりも4〜5倍程度速くなっていた。樹冠への乾性降下物の負荷量は斜面上の位置に大きく影響されていた。尾根上に生育している樹冠へのSO42-負荷量は大きく,尾根上に20m以上突き出して生育しているヤクタネゴヨウでは,針葉表面への乾性沈着やオゾン負荷が非常に大きくなっていた。11月から翌年2月にかけて,針葉からのカリウム溶脱速度やエチレン放出速度は非常に増大し,葉面積あたりの乾燥重量は減少していた。非海塩性SO42-の負荷量の増大は,針葉表面を酸性化し,葉表面の劣化を促進し,針葉や土壌からの溶脱を促進していると考えられた。
Ecological Research 25 (2010) DOI: 10.1007/s11284-009-0647-9