檜皮は,主に樹齢70〜80 年生以上のヒノキ生立木から採取される樹皮で,7世紀以降,神社建築や貴族の住居である寝殿造などの屋根葺材として用いられてきた.現在,わが国において国宝および重要文化財に指定されている檜皮葺の建造物は約700棟あり,これを維持するためには年間約3500m2の葺き替えが必要となるとされている(後藤 1999).近年,檜皮採取の対象となる高樹齢ヒノキ林の減少や檜皮採取技能者である原皮師(もとかわし)数の減少に加え,檜皮採取がヒノキの成長阻害や材質低下をもたらすという見方が広がり,檜皮採取に協力する森林所有者が減少したことから,わが国の伝統建築物の維持に必要な檜皮材の安定供給体制の維持が危ぶまれている(八木 2000) 福岡演習林では,高樹齢ヒノキ生立木からの檜皮採取試験および檜皮採取が成長や材質にあたえる影響を評価するためのデータを蓄積する.
試験地:木造建造物文化財用大径.高品位ヒノキ材生産のための保育技術に関する研究試験地 樹種:ヒノキ人工林 場所:18林班