1.つる性木本植物学術参考保護林

荒平団地1林班内(33°38′N,130°33′E,標高210m)に位置する.
過去には糟屋演習林第2次編成経営案説明書(1954~1963年)で学術参考保護林に指定されていた.福岡演習林の中ではつる性木本植物の密度が高い林分で,初島(1934)は「当地方稀に見る暖地生植物並に珍奇植物おおきを以て適当の方法により保護するを要す」と福岡演習林全林分の中で本林分を唯一保護すべき箇所として記載している.

2.モミ・コバノミツバツツジ学術参考保護林

御手洗水団地4林班内(33°38′N,130°32′E,標高 373m)に位置する.
福岡県レッドデータブック 2011(福岡県環境部自然環境課 2011)ではモミ群落が将来的な破壊の危険性が大きいカテゴリーⅢに分類されており,当林分はその中でも比較的低標高にある.
山内ら(2013)によるとモミは4林班のみ出現頻度が高く, 初島(1934)では福岡演習林内ではコバノミツバツツジが稀とされている.

3.ネズミサシ学術参考保護林

穴口団地8林班内(33°38′N,130°31′E,標高124m)に位置する.当林分では1955年にマツ類が植栽され,1979年に皆伐された.1980 年にヒノキとクヌギが植栽されたが,後に二次林となった.
ネズミサシ(Juniperus rigida Siebold et Zucc.)は,ヒノキ科ネズミサシ属の常緑低木または高木で岩手県以南の本州,四国,九州,朝鮮,中国に分布する(佐竹ら 1989b).福岡県レッドデータブック2011(福岡県環境部自然環境課 2011)では準絶滅危惧に指定されている.
山内ら(2013)によるとネズミサシは8林班のみ出現頻度が高い.

4.リュウキュウマメガキ学術参考保護林

新建団地15林班内(33°39′N,130°32′E,標高460m)に位置する.
リュウキュウマメガキ(Diospyros japonica Siebold et Zucc.)は,カキノキ科カキノキ属の落葉高木で関東地方以西の本州,四国,九州,琉球,中国中部に分布する(佐竹ら 1989b).福岡県レッドデータブック2011(福岡県環境部自然環境課2011)では絶滅危惧IA類に指定されている.

5.シイ・カシ類学術参考保護林

新建団地16林班内(33°39′N,130°32′E,標高425m)に位置する。
福岡県レッドデータブック2011(福岡県環境部自然環境課2011)ではツブラジイ群落,ウラジロガシ群落,アカガシ群落は将来的な破壊の危惧が大きいカテゴリーⅢに分類されている.
初島(1934)は福岡演習林内においてシラカシ(Quercus myrsinifolia Blume)はきわめて稀,ツブラジイ(Castanopsis cuspidata (Thunb.) Schottky)とウラジロガシ(Quercus salicina Blume)は稀,アカガシ(Quercus acuta Thunb.),アラカシ(Quercus glauca Thunb.)は普通としている.
山内ら(2013)は,標高300m以上の新建および新谷地区(13~19林班)ではアカガシ,ウラジロガシ,アラカシなどの常緑カシ類が多く出現し,スダジイ(Castanopsis sieboldii (Makino) Hatus. ex T.Yamaz. et Mashiba),タブノキ(Machilus thunbergii Siebold et Zucc.)も混在していたと報告しており,本保護林はその代表的な林相といえる.
隣接するヒノキ人工林では1911年に植栽が行われており,同程度の樹高のヒノキ(Chamaecyparis obtusa (Siebold et Zucc.) Endl.)がプロッ ト周辺に点在することから,当時,人為的な攪乱を受けた可能性がある.