概要
九州大学は,九州と北海道という自然環境・社会条件が著しく異なる場所に約7,093haの大学の森「演習林」を有する唯一の大学で,次の3演習林から構成されています.
これらの演習林は,暖温帯~中間温帯~冷温帯~亜寒帯に至る日本列島の主要な植生帯をカバーしています.演習林は大型の森林フィールド実験施設であり,教育研究のために最良の状態に保つよう維持管理しています.
これらの森林は,森林に関する林学,林産学,生態学,生理学,土壌学,気象学,水文学等の分野の教育研究だけでなく,森林に関する成人教育や小中高校生の体験学習など地域連携教育の場としても活用されています.
演習林で継続的に蓄積されている写真情報を顕在化し,充実を図ることを目的として、2010年度から演習林フォトコンテストを開催しています.
教育
- 演習林では,大学における学部教育・大学院教育や,様々な課外教育プログラムが実施されています.なお,生態水文学実習は「公開森林実習」となっています.
- 学部教育では,農学部地球森林科学コースの講義・実習をはじめ,卒業論文の研究等にも活用されています.
- 全学教育科目として3演習林を利用した合宿形式の「森林科学入門」が行われています.なお,森林科学入門は福岡西部地区5大学(九州大学,西南学院大学,中村学園大学,福岡大学,福岡歯科大学)連携科目および早稲田大学との交流科目となっています.
- 2000年4月の大学院重点化完了に伴い「学府・研究院制度」が導入され,演習林でも大学院教育(大学院生物資源環境科学府 環境農学専攻 森林環境科学教育コース)が重要な位置を占めています.
- 特に演習林に拠点を置く森林生産制御学研究室および流域環境制御学研究室では,各国(日本,中国,韓国,カンボジア,フランスなど)の様々な大学(近畿大,広島大,福岡教育大,北京林業大など)様々な分野から多数の院生が集い,森林・林業に関する多様な教育研究が行われています.
- 演習林では様々な課外教育プログラム(地域住民への生涯学習,小学・中学・高校教師に対する社会人教育,小学・中学・高校生に対する体験学習など)が実施されています.
研究
- 演習林は,農学部のみならず様々な部局や,他大学・他研究所など様々な機関の研究の場として活用されています.
- 試験地や資材・データ等を提供し,これらの研究を支援しています.
- 演習林の森を活用した研究をより活性化させることを目的として,1998年度から毎年研究発表会を開催しています.
- 演習林を活用した原著論文の公表を目的とした九州大学農学部演習林報告と,演習林を利用した教育研究・管理運営活動の報告を目的とした演習林年報を刊行しています.
管理
- 演習林は森林をフィールドとした教育研究のための大型野外実験施設です.
- 演習林を利用した教育研究は,演習林の技術職員および事務職員の支援に基づいて,農学研究院 環境農学部門 森林環境科学講座 流域環境制御学分野および森林生産制御学分野の教員および演習林技術職員で構成される研究部によって推進されています.
- 演習林は,審議会,管理運営委員会,連絡協議会,教員会議,(各演)連絡会議および研究部会議の議を経て,実験施設としての森林フィールドを最良の条件に保つよう管理が行われています.
管理運営
- 演習林審議会-演習林管理運営委員会-演習林連絡協議会-演習林教員会議-(各)演習林連絡会議および研究部会議
- 技術職員は2024年3月に「統括技術部」および同年4月から「農学研究院 研究教育支援センター 演習林部門技術室」を兼務しています.
演習林の歩み
- 海外の演習林の名称は,歴史的用語として,当時使用されていた名称をそのまま記載しています.
演習林等の沿革
- 1911年(明治44年) 1月 九州帝国大学設置
- 1912年(大正元年) 12月 朝鮮演習林(後の南朝鮮演習林)を朝鮮総督府から借地して設置 九州大学演習林創設
- 1913年(大正 2年) 12月 台湾演習林を台湾総督府から移管をうけて設置
- 1914年(大正 3年) 4月 樺太演習林を樺太庁から移管をうけて設置
- 1919年(大正 8年) 2月 農学部創設
- 1922年(大正11年) 5月 林学科設置に伴い農学部附属演習林に改称 演習林本部を箱崎キャンパスの林学科内に設置
- 1922年(大正11年) 9月 早良地方演習林(後の早良実習場,早良保全緑地)を農商務省から移管をうけて設置
- 1922年(大正11年)10月 糟屋地方演習林(後の福岡演習林)を農商務省から移管をうけて設置
- 1926年(大正15年) 1月 北朝鮮演習林を朝鮮総督府から借地して設置 朝鮮演習林は南朝鮮演習林に改称
- 1939年(昭和14年) 3月 宮崎地方演習林(後の宮崎演習林)を民有林購入によって設置
- 1945年(昭和20年) 8月 終戦により外地の4演習林を廃止
- 1947年(昭和22年)10月 九州帝国大学が九州大学に改称
- 1949年(昭和24年) 2月 北海道地方演習林(後の北海道演習林)を大蔵省から移管をうけて設置
- 1951年(昭和26年) 5月 全国大学演習林協議会の設立をうけて加盟
- 1962年(昭和37年) 6月 研究部、事務部制が発足
- 1971年(昭和46年) 7月 研究部に森林,林業,林産の3研究部門を設置
- 1988年(昭和63年) 6月 森林生物,森林環境,森林生産,森林利用の4研究部門に再編
- 1993年(平成 5年) 10月 演習林本部,糟屋地方演習林,早良地方演習林を統合し福岡演習林に改称 福岡演習林第10林班に建築した庁舎に移転 早良地方演習林は福岡演習林早良実習場に改称 宮崎,北海道地方演習林を宮崎,北海道演習林に改称
- 2000年(平成12年) 4月 大学院重点化に伴い改組 農学研究院 森林資源科学部門 森林生態圏管理学講座所属となり森林生産制御学および流域環境制御学分野を担当 4研究部門から2研究部門に再編 農場事務と演習林事務を「農場・演習林事務部」に統合改組
- 2004年(平成16年) 4月 国立大学法人に移行 国立大学法人九州大学 演習林は民有林化となる
- 2008年(平成20年) 7月 農場・演習林事務部は農学部事務部に統合
- 2010年(平成22年) 4月 農学研究院の再編に伴い 農学研究院 環境農学部門 森林環境科学講座所属となり森林生産制御学および流域環境制御学分野を担当
- 2012年(平成24年)12月 演習林創設百周年記念事業を挙行
- 2018年(平成30年)10月 農学部が箱崎キャンパスから移転 伊都キャンパス開講
- 2021年(令和 3年) 4月 早良実習場を財務部資産活用課総括係へ管理換
- 2022年(令和 4年) 4月 早良実習場をキャンパス計画室保全緑地部門へ管理換 管理換に伴い早良保全緑地と改称
- 2022年(令和 4年)10月 福岡演習林創設百周年記念事業を挙行