森林の変化による地球環境変動

グローバルな視点からみた森林の意味

  

 森林は,降水量の比較的多いところに存在し,太陽エネルギーの多くを蒸発・蒸散にともなう水から水蒸気への変換に使用します.そのため,森林は地球規模の熱循環と水循環に大きな影響を与えています.また,森林は光合成により大気中の二酸化炭素を取り込んで,その木材と土壌中に貯蔵します.過剰な伐採による森林の減少が気候変動や温暖化に与える可能性が大きいというのは,このような理由からです.私たちは,地球環境の維持という観点から森林と熱・水・二酸化炭素の関係を,もっと知る必要があります.地球環境における森林の役割を理解するためには,気象観測から一本の樹木の生理学的計測まで,土の中から上空まで,長期間で継続的に,世界中の様々な場所で調べなければなりません.   

 今,世界中では森林についてどのようなことが調べられているのでしょうか?

●FLUXNET(フラックスネット)

世界92箇所で,二酸化炭素を中心に,森林と大気との間でやりとりされる熱・水・二酸化炭素の動きがモニタリングされています.

●GAME(GEWEX)

GEWEXはGlobal Energy and Water cycle Experiment,GAMEは,GEWEX Asian Monsoon Experimentの略です.つまり,GEWEXは海陸を問わず,地球全体の熱・水の循環を解き明かすことを目的としたプロジェクトで,GAMEはそのうちアジアモンスーン地域をターゲットにしたプロジェクトです.これらのプロジェクトでは,熱・水の循環の中での森林の役割も詳しく調べられています.

 これらの観測結果は,変動する環境と森林の関係を表す数値モデルをつくるときの材料になります.

森林がなくなった場合,蒸発散量だけでなく雨量もかなり減少しています.このことは,「アマゾンのような広い森林では,樹木が大気へ放出している水が,雨もつくりだしている」ということを意味しています.一度,熱帯林を伐採し尽くしてしまうと,二度と熱帯林には戻らないという可能性をも示しているのです.

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『森・水・人』−学術の森による森林生態圏科学の展開