地理・気象
九州大学宮崎演習林は宮崎県東臼杵郡椎葉村大河内に所在する。本演一帯は熊本県の五家荘とともに九州脊梁山地の中央部山間僻地の代表的地域であり,日向灘に注ぐ一ツ瀬川源流地域に含まれる。所管する森林の総面積は 2,915haであり,三方岳(2,282ha),津野岳(487ha), 萱原山(146ha)の三団地からなる。昭和51~60年の統計で見る演習林庁舎付近の年平均気温は13.1℃,月平均気温の最高は8月の24.2℃,最低は1月の0.3℃で,年較差,日較差ともに大きい。また,本演一帯は年降水量が多い年には4,000mmに達する多雨地帯であり,日降水量も725mm(昭和29年),569mm(昭和57年)などを記録している。
地質・地形
本演一帯は,西南日本外帯の四万十累帯に属し,延岡ー紫尾山構造線をはさんで中生代四万十層群が基盤をなしている。四万十層群は砂岩・頁岩・粘板岩およびそれ らが強い変成作用を受けてできた千枚岩から成り,ところどころに第三紀貫入花崗岩類も分布する。三方岳団地は構造線の北側に位置し,強い変成作用を受けた千枚岩が分布し,津野岳団地には花崗岩が分布する。また,萱原山団地は構造線の南側に位置し,変成 作用をあまり受けていない四万十層群と花崗岩との境界付近に当たっている。地形は急峻で30度以上の傾斜地が30%を占め,山ひだは複雑で渓流も屈曲している。また,各団地最高点の標高は,三方岳1,479m,津野岳1,607m,萱原山1,364mである。このような地質・地形条件のため,この一帯は地すべりや斜面崩壊の危険性が極めて高い。
植生
演習林一帯の植生は,林地のほとんどが標高1,000m以上に位置しており,ブナ,ミ ズナラ,カエデ類,シデ類などの落葉広葉樹と,モミ・ツガなどの針葉樹とが混生した(針広比率2:8)九州の代表的な温帯性落葉広葉樹林となっている。
主要樹種
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針葉樹:モミ,ツガ,アカマツ,ヒメコマツ,コウヤマキ
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広葉樹:ブナ,ミズナラ,ミズメ,イヌシデ,ヒメシャラ
代表的群集・群落
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スズタケーブナ群集
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モミ・ツガ群集
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モミ.ツガ・アカマツ群集
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コウヤマキ群落
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サワグルミ群落
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レンゲツツジ群落
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ツクシシャクナゲ群落
これらの優良林分や学術的に価値の高い林分については,天然更新試験地や学術参考保護林として保護を加え,永続的な保存をはかっている。さらに,一部の林分につ いてはスギ,ヒノキなどの人工林に転換し,高冷地造林技術の研究開発に活用している。林地の状況は,平成22年度4月現在,人工林526ha,天然林2,346ha(人工林率18.0%)となっており,また天然林の中には,アカマツおよびコウヤマキ等の学術参考保護林205ha,自然林保全区1,419haなどが設定されている。

コウヤマキ
鳥獣
本演一帯は九州地方で著しく減少している貴重な天然生山岳林が残されており,しかも 冬期の積雪量が比較的少なく,多くの野生鳥獣のすみかとなっている。特に,ほ乳類で はニホンイノシシやニホンジカ,あるいはニホンカモシカなどが生息しており, 椎葉村の猟師にはこれらを狩る際の宗教的儀礼が伝承されている。演習林内では鳥獣保護区に指定されている三方岳団地などにおいて,これらの大型獣を見ることができる。また,ニホンアナグマ,ホンドテン,ホンドタヌキ,ホンドキツネなどの肉食獣も生息する。さらには四季を通じてキジ,ヤマドリ,コジュケイ,クマタカ,サシバ,アオバズク, オシドリ,キジバト,アオバト,オオアカゲラ,ヤマセミ,アカショウビン,カケス,オオルリ,コガラ,ヤマガラ,ウグイスなど大小さまざまな鳥類を観察することができる。

キュウシュウジカ
宮崎演習林の紹介動画
- 椎葉の植生1 Vegetation characteristics of Shiiba Forest 1
- 椎葉の植生2 Vegetation characteristics of Shiiba Forest 2
- 北海道から連れてこられた樹木たち Trees that had been brought from Hokkaido to Shiiba
- シカが森林に与える影響 Impacts of deer on the forest ecosystem
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