18 雪虫(トドノネオオワタムシ)

トドノネオオワタムシ
晩秋から初冬、雪のように舞う白い綿きれのような虫を見ることがあります。これが「雪虫」です。その正体はアブラムシ。 アブラムシは季節に応じて、翅(はね)を持たずに繁殖に専念するもの(無翅虫)、翅を持ち植物から植物へ移動するもの(有翅虫)など、様々な形態を持った世代が生まれる複雑なライフサイクルを持っています。この中で、その有翅虫が白い綿状の物質を纏っている種類が、俗に雪虫と呼ばれます。 雪虫の筆頭、トドノネオオワタムシは、晩秋~初夏はヤチダモ、初夏~晩秋はトドマツの根際で生活しています。晩秋にトドマツからヤチダモへ移動する有翅虫の姿が、私たちが目にする雪虫というわけです。このように季節に合わせて異なる植物間を移動することを奇主転換といい、アブラムシの仲間においては珍しいことではありません。 雪虫が出現すると初雪が近いといわれており、出現から平均2.24週間後に降雪が観測されるという調査結果もあります。厳しい冬の到来も気がかりですが、不思議な生態をもつアブラムシに思いを馳せるのも面白いですね。(九州大学北海道演習林 田代直明・佐々木寛和)