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フッキソウ
春先に足寄町内の森を散策していると,雪解けとともに林床から高さ2,30cmほどの常緑の植物が現れているのを多数目にします.一見草のように見えますが,これはツゲ科フッキソウ属に属する常緑の亜低木で北海道から九州までと中国に分布します.漢字では「富貴草」が当てられており,年間を通して緑の葉が茂る様をとこしえの繁栄にたとえたものと言われます.寒さや乾燥に強いことに加え,日射が少なくても成長できる性質が知られています.庭園では地表を覆うグラウンドカバープランツに利用され,法面の被覆緑化への利用も行われています。3~5月に咲く花は花弁が無く,目立ちませんが,白く熟した果実は林床に映えます.アイヌ民族は冬に鹿が群れて食べる様子からユクトマキナ(鹿が群れる草)と呼び,葉を温めて温湿布としたり,果実を胃腸薬として煎じて利用しました.成分としては複数のアルカロイドが含まれていることが分かっています.(山内康平・内海泰弘)