40 体の大きさの違い

エゾシカ(左)とキュウシュウジカ(右)
【演習林事務所にて展示中】
 「気温の変化に関わらず,ほぼ一定の体温を保つ能力のある恒温動物には,暖かい地域より寒い地域で体が大きくなる」という「ベルクマンの法則」が知られています。恒温動物は体温維持のため,体内で熱を発生させ体温を上げ,体の表面から熱を発散し体温を下げます。熱の生産量は体重に,発散量は体の表面積により増加します。立方体で考えた場合,一辺(体長)が倍になれば体積(体重)は8倍になっても,表面積は4倍に留まります。大きな体の方が熱の生産量に対し発散量の割合が少ないため,効率的に体温を維持することで寒さに有利になります。同じニホンジカに分類されるエゾシカのオスの体重は120kg,ホンシュウジカでは100~80kg,キュウシュウジカでは50kg程度という報告があり,同じ動物であっても寒冷な足寄のニホンジカは,温暖な九州のニホンジカの2倍以上になります。エゾシカが冬でも野山をかけまわることができるのは,体の大きさに理由があるのかもしれません。(井上幸子・内海泰弘)

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