06 雌阿寒岳

演習林から眺めた雌阿寒岳

里見が丘から東を望むと,雌阿寒岳(標高1499m)がゆったりとした裾野を広げているのが見えます。随筆家及び登山家である深田久弥の日本百名山の1座にも数えられ,アカエゾマツ林からハイマツ群落を通り荒涼とした火山荒原をめぐる登山コースは景色が素晴らしいです。健脚の方ならオンネトーに降りるのも面白いでしょう。北海道は本州よりも緯度が高く寒冷なため,本州では高い山にしか見られない植生が比較的標高の低いところで手軽に観察できます。たとえば,アカエゾマツ林に類似した針葉樹林は信州では標高2000m程度まで登らないと見ることはできません。過去の火山噴火も森林の組成や配置に大きな影響を与えています。雌阿寒岳西麓ではハイマツ群落の下限が標高約1000mと低く,その下方に発達したアカエゾマツ林が広がっています。これは400年ほど前に起きた噴火に伴う火砕物の流下によりそれまであった森が破壊されたためと考えられています。山も森も時間とともに少しずつ変わっていくものなのですね。 (中村琢磨,智和正明)

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