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セッケイカワゲラ

全てが凍り付く寒い冬.しかし,生き物の気配の乏しい雪の上をよく観察すると,1cm程度の小さな虫を見かけることがあります.これはセッケイカワゲラと呼ばれる昆虫です.昆虫は変温動物なので寒いと体を動かせなくなりますが,セッケイカワゲラの仲間は体内に特殊な酵素系を持っているため逆に低温でないと動けません.手のひらに乗せて観察するとすぐに弱ってしまう変わった生き物です.セッケイカワゲラの幼虫は夏の間は水の冷たい沢で暮らし,晩秋に急速に成長し真冬に成虫となって地上に上がります.成虫は性成熟する前は体内の太陽コンパスという仕組みを使って上陸したところより沢の上流に向かい,2月下旬に性成熟すると今度は産卵のため沢に近づこうとします.卵は雪融けとともに沢の下流に運ばれることで生活史を繰り返します.セッケイカワゲラのように氷雪環境に特化した生物は氷河生物と呼ばれ,ユニークな生き方で過酷な環境にうまく適応しています.

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